東京都文京区の名門女子校・桜蔭学園が、校舎に近接する高層マンション建設計画をめぐり、東京都に許可をしないよう求めた手続きで、東京地裁は5月18日、学園側の請求を却下した。
問題となっているのは、桜蔭学園に隣接する8階建てマンション「宝生ハイツ」の建て替え計画だ。
計画では、既存建物を地上20階建て、高さ約70メートル、最高部約76メートルの高層マンションに建て替えるとされる。学園側は、校舎との距離が近いことから、日照の悪化、上階からの視線、盗撮リスク、工事中の安全面などを問題視していた。
桜蔭学園は、東京都が総合設計制度に基づく許可を出す前に、許可をしないよう求めた。学園側は、建物が完成すれば教室に日が入りにくくなり、教育環境が悪化すると主張。さらに、女子生徒が長時間過ごす校舎に対し、高層階から視線が届く可能性があるとして、プライバシー面での懸念も訴えていた。
これに対し、東京地裁は学園側の主張を認めなかった。
篠田賢治裁判長は、差し止めが認められるには、許可によって直ちに重大な損害が生じるおそれが必要だとした。そのうえで、学園側が訴える日照や視線の問題は、建物が完成した後に生じ得るものであり、許可後の取消訴訟などで救済を受けることが可能だと判断した。
つまり、裁判所は今回、**「不安があるかどうか」ではなく、「許可前の段階で計画を止める法的要件を満たすか」**を見たことになる。
学園側から見れば、建物が完成してからでは遅いという考えがある。校舎の近くに地上20階建ての建物が立てば、日照、圧迫感、上階からの視線、工事中の安全面は、生徒の日常に直接関わる。
特に女子校の場合、教室や廊下、更衣を伴う学校生活への視線対策は、単なる近隣トラブルとして片づけにくい。スマートフォンで遠距離撮影が容易になった現在、学園側が「のぞき見」や「盗撮」の懸念を訴えた背景には、時代に即した不安がある。
一方、建て替えを進める側にも事情がある。老朽化したマンションの更新は、住民の安全や資産管理に関わる。都市部では土地の高度利用も避けて通れない。今回の裁判は、学校側の安全・教育環境と、都市開発・所有権の調整が真正面からぶつかった案件といえる。
今回、東京地裁は学園側の請求を却下した。
ただし、これで論点が消えたわけではない。今後、東京都の許可手続き、建築主側の説明、学園側の追加対応が続く可能性がある。
文京区の名門女子校の隣に、高さ約70メートル級の高層マンションが建つ計画。
問われているのは、都市開発のスピードと、学校に通う生徒の安全・プライバシーをどう両立させるかだ。

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