白山・佛子園学童でも女児への虐待5件認定 保護者・家族から広がる不信
石川県内の福祉施設で、利用者や児童への虐待問題が相次いで表面化している。
中能登町良川の障害者支援施設「つばさ」では、職員が利用者の顔を殴る、足を蹴る、土下座を強要するなどの虐待行為を行っていたとして、石川県が施設に対し、新たな利用者の受け入れを3カ月間停止する行政処分を通知した。
さらに白山市では、社会福祉法人「佛子園」が運営する放課後児童クラブで、30代の男性職員2人による女子児童への性的虐待など計5件が市に認定されていた。児童を預かる施設と、障害のある人を支える施設で相次いで不祥事が明らかになり、保護者や家族からは施設運営への不信が強まっている。
今回、県の行政処分を受けたのは、社会福祉法人つばさの会が運営する障害者支援施設「つばさ」。施設は中能登町良川にあり、障害のある利用者の日中活動、生活支援、就労支援などを行っている。
県などによると、2025年9月、施設の職員が入所者からスリッパを投げられたことに腹を立て、利用者を羽交い締めにしたうえ、顔を複数回殴り、足を蹴るなどした。さらに、利用者に土下座での謝罪を強要したとされる。
虐待が明らかになったきっかけは、別の職員から自治体への通報だった。外部に情報が届かなければ、利用者への暴行や謝罪の強要がどこまで施設内で扱われていたのかは見えにくかった。
問題を重くしたのは、今回の職員が過去にも虐待行為を行っていた点だ。
施設では2021年7月にも、同じ職員が別の利用者に対して出血を伴うけがをさせる身体的虐待を行い、県が行政指導していた。つまり、過去に指導を受けた職員が、数年後に再び別の利用者へ暴行を加えた疑いがある。
県は監査を行い、施設側に利用者の人格を尊重する義務への違反があったと判断した。そのうえで、6月10日から3カ月間、新たな利用者の受け入れを停止する処分を決めた。
問題の職員はすでに退職したとされる。だが、退職で終わる話ではない。過去に虐待を起こした職員が、なぜ再び利用者と接する現場にいたのか。前回の行政指導後、施設内でどのような確認が行われたのか。職員への見守りや配置、利用者からの訴えを受け止める方法は十分だったのか。家族が知りたいのはそこだ。
施設側は再発防止に向け、およそ70人の全職員を対象に虐待防止の研修を行うとしている。理事長は利用者に申し訳ないと謝罪し、再発防止を徹底するとコメントしている。
ただ、研修だけでは再発防止とは言えない。過去に行政指導を受けた職員が再び虐待を行った疑いがある以上、必要なのは講義形式の研修だけではない。勤務中の記録、複数職員による確認、利用者の家族への説明、外部通報窓口、虐待の兆候が出た職員を現場から外す判断が必要になる。
同じ時期に、白山市の放課後児童クラブでも深刻な問題が明らかになった。社会福祉法人「佛子園」が運営する複数の放課後児童クラブで、30代の男性職員2人による女子児童への虐待など5件が市に認定された。
認定された内容には、性的虐待、身体的虐待、心理的虐待、不適切保育が含まれるとされる。被害を受けたのは女子児童3人。保護者からは、説明不足や隠ぺいを疑う声も上がっている。
佛子園の問題と、つばさの問題は、施設も法人も異なる。だが、共通しているのは、子どもや障害のある人など、自分の被害をすぐに訴えにくい立場の人が被害を受けたとされる点だ。
福祉施設は、利用者や児童、家族から強い信頼を預かる場所である。保護者は子どもを預け、家族は障害のある利用者の日中活動や生活支援を任せる。その場所で、職員による虐待が起きた場合、被害は身体だけで終わらない。施設に通うこと、職員と接すること、家族が預けることへの不安が残る。
今回の「つばさ」の事案では、別の職員が通報したことで虐待が明らかになった。これは、施設内に問題を外へ出す職員がいたという点では重要だ。一方で、通報がなければ発覚が遅れた可能性もある。
福祉施設に必要なのは、職員の善意だけに頼らない運営である。利用者のあざ、表情、職員への恐怖、急な拒否反応、家族への訴え、職員同士の違和感を、記録して共有する必要がある。虐待が疑われる場合は、施設内で処理せず、自治体や第三者に報告する流れを明確にしなければならない。
石川県内では、児童施設と障害者支援施設で相次いで虐待問題が報じられた。白山の佛子園では、保護者への説明のあり方が問われている。中能登のつばさでは、過去に指導を受けた職員が再び虐待を行った疑いが問われている。
どちらの問題にも共通するのは、発覚後の謝罪より前に、現場で止められなかった事実である。子どもや障害のある人を守るためには、職員研修、内部通報、外部監査、家族への説明、配置の見直しを一つずつ実行する必要がある。
県と自治体には、処分や指導で終わらせず、今後の確認を続ける責任がある。法人側には、被害を受けた利用者や児童、家族に対し、何が起き、誰が把握し、どの時点で止められなかったのかを説明する責任がある。
福祉施設は、弱い立場の人を支える場所でなければならない。その場所で虐待が繰り返された場合、問われるのは一人の職員だけではない。利用者や児童の声を拾えたのか。家族に必要な説明をしたのか。職員同士が止められたのか。行政が早く把握できたのか。石川県内で相次いだ今回の不祥事は、福祉の現場にその確認を迫っている。
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編集部まとめ
石川県中能登町良川の障害者支援施設「つばさ」で、職員が利用者の顔を殴る、足を蹴る、土下座を強要するなどの虐待行為を行っていたとして、石川県が新たな利用者の受け入れを3カ月間停止する行政処分を通知した。
この職員は、2021年にも別の利用者に出血を伴うけがをさせる身体的虐待を行い、県から行政指導を受けていた。過去に指導を受けた職員が再び虐待を行った疑いがある点は重い。
同時期には、白山市の社会福祉法人「佛子園」が運営する放課後児童クラブでも、女子児童への性的虐待など5件が市に認定された。石川県内で児童施設と障害者支援施設の不祥事が相次ぎ、保護者や家族の不信は強まっている。
今後は、職員研修だけでなく、外部通報窓口、家族への説明、職員配置の見直し、自治体による継続確認が必要になる。
Q. 石川県中能登町の「つばさ」で何がありましたか。
障害者支援施設「つばさ」で、職員が利用者の顔を殴る、足を蹴る、土下座を強要するなどの虐待行為を行っていたとして、石川県が行政処分を通知しました。
Q. 石川県の処分内容は何ですか。
施設に対し、6月10日から3カ月間、新たな利用者の受け入れを停止する処分です。
Q. なぜ問題が重く見られているのですか。
この職員は2021年にも別の利用者に身体的虐待を行い、県から行政指導を受けていたためです。過去に指導を受けた職員が再び虐待を行った疑いがある点が問題視されています。
Q. 白山市の佛子園の問題とは関係がありますか。
施設や法人は異なります。ただし、同じ石川県内で、放課後児童クラブの虐待認定と障害者支援施設の行政処分が相次いで報じられたことで、福祉施設の安全管理への不信が広がっています。
Q. 今後必要な対応は何ですか。
職員研修だけでなく、外部通報窓口、家族への説明、職員配置の見直し、虐待を疑うサインの記録、自治体による継続確認が必要です。

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